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経営革新物語

儲けるための武器「会計力」を磨く

国頭村観光物産株式会社(道の駅ゆいゆい国頭)

10期連続赤字続き

国頭村観光物産株式会社は道の駅「ゆいゆい国頭」運営会社として設立された第三セクター(国頭村51.6%出資)で、平成11年4月から営業を開始しました。同社設立の目的は地元の物産を販売、観光を振興し地域の活性化に貢献するとともに雇用の場を創出することにありました。しかし管理は役員全員が非常勤で、さらに畑違いの支配人が経営を行っていたため、抜本的な改善への取組も無く、10年間連続の赤字が続き、平成20年度の累積赤字が36,920千円になっていました。毎年平均3,692千円の赤字を出していたことになります。当時は資金繰りにも困り役員が用立てていたようです。

経営改革へ

平成19年国頭村商工会会長で国頭村観光物産株式会社の社長を兼務されていた崎浜秀安氏が本格的に経営の立て直しへと動き始め、まず初めに正確な会計を行うため経理事務を国頭村商工会に委託し、平成21年沖縄県商工会連合会嘱託専門指導員であった私に管理会計の導入依頼がありました。平成22年に金城茂氏が社長に就任し、会計で会社を強くするため中小会計要領を導入、本格的運用を始めました。平成24年元国頭村商工会経営指導員の平良勇氏を支配人に、国頭村商工会記帳指導員の田場なみき氏を経理の専任として迎え、自計化と管理の推進体制を整えました。

同年、船井総研内でもトップクラスの実績を持つ佐橋賢治氏に売場レイアウト、看板、のぼりの設置等の指導を受け、平良支配人は直ちに実行に移し、集客の拡大とそれに伴う客単価の増で売上高対前年比112.6%増を達成しました。

また、従業員教育も沖縄県商工会連合会のスーパーバイザー北部地区担当の吉元真嗣氏が毎月のように指導し、従業員の意識改革も進みました。

管理会計の課題は変動費率が高く、損益分岐点比率が100%/近い状態でした。早速、変動費率の低減に取り組み、結果平成21年から平成25年までに全社で変動費率を10.4%低減することができ、損益分岐点比率も5.8%改善が見られました。変動費率を部門別に見れば特産品販売部門が△0.6%、レストラン部門が2.7%、比地キャンプ場部門が△12.2%、薬膳味噌部門が△75.2%、ふるさと市部門が△0.1%となっています。このなかでレストラン部門の変動費率が46.4%と異常に高く、さらに高騰していました。通常レストランの変動費率は35.0%以下なので11.4%も高い状態です。変動費率を11.4%下げることが出来れば経常利益で4,302千円の増益です。低減が実行されない原因はレストラン部門の主任が仕入金額のチェック(予算との比較)を怠り、変動費低減に協力しなかったためです。会社が経営改革へ全力で取り組んでいる姿をただ平然と見ていたのでしょう。平成26年度からは総務部門でレストラン食材の仕入を日々チェックしています。チェックを行った結果、仕入対前月比日額△6,903円減額することが出来ました。今年度3か月累計の変動費率は40.6%、対前年比△5.8%、経常利益に換算すれば472千円の増益効果です。これは3か月の経常利益の50.5%に相当します。

従業員の所得を向上させるために平成24年度に初めて賞与を1か月分支給、その後毎年1か月分を加算し平成28年度には5か月分を支給する計画です。本来、給与を増額すべきですが累積の赤字があるため給与の増額はせず賞与を伸ばす方法をとりました。平成25年度は経常利益対前年比900.8%増を達成しています。平成29年度には累積の赤字もなくなる予定です。10年分の赤字を消すのに8年かかります。累積の赤字がなくなった時、給与そのものを上げ、事業目的の雇用の場を創出していけるよう事業の拡大を推進していく計画です。

管理会計導入成果

  1. 月次の進捗管理が実施できる体制が構築され、利益計画の達成状況把握が可能となった。
  2. 全従業員参加による経営改善が課題の認識と改善目標の共有化で出来るようになった。
  3. 不採算部門明らかにし改善計画を立てPDCAによる改善活動を実施した。
  4. 数字を意識したコスト削減や販売強化への取り組みが強化された。
  5. 雇用の場の創出:新規事業喫茶部門(Yui cafe)開設(3名採用)。

会計で会社を強くするには

会計の役割を一言で表現すれば“複雑そうに見える会社・企業の経営の実態を数字によってきわめて単純に、その本当の姿を映し出すことである”ということになります。

強い会社を創る責任は社長にあります。そして、強い会社として生き続けるためには、適正な利益を出し続け、財務力と収益力両方を持つ会社になることです。どこの会社でも社員のみなさんは皆必死に働いています。会社のトップが目標達成のため一人ひとりの役割を具体的に決め、社員に明確な方向性と進むべき方向を指し示し、PDCAを実行すれば必ず良い成果が生まれます。

儲かり続けるにためには

  1. 自計化をし
  2. 経営計画の策定(中期経営計画・短期経営計画)し
  3. 進捗管理(短期経営計画と月次業績とのズレを 管理する)行うことです
  4. そこで改善すべき点にピンポイントで迫る会計データ作成し
  5. 毎月、業績検討会でPDCAサイクルを確立していけば、経営力は目に見えて向上します。

これらはすべて、生産性の向上や、収益率の向上を目的とし、最終的には、必要利益の獲得を達成し、自己資本の増加を達成します。その明確な方向性を確認するのが管理会計です。

経営者が知らなければならない数字は

  1. どこに手を打てば利益が出るか
  2. 資金繰りに強い体質づくりはどうすればよいかを知ることです。

 

 

沖縄県商工会連合会 支援課
消費税転嫁対策コーディネーター 波平常雄

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